「ゆっくり弾くこと」の罠1: 「ゆっくり弾くこと」の罠とは

公開日: 2016年8月23日火曜日 ピアノ ゆっくり弾く

こんにちは、リトピです。

ピアノ上達方法・練習方法において、「ゆっくり弾くこと」が挙げられることが多いですが、これには数多くの【罠】が存在しています。ここでは、その【罠】の概要についてご紹介します。

「ゆっくり弾くこと」とは

ここでは、巷で言われている練習方法、メリット3つについて挙げつつ、そのダメな点・6つの罠を指摘します。

巷で言われている練習方法…とそのダメな点

文字通り、「ゆっくり弾くこと」ですね。これはよくメトロノームと併用し、「とっても遅く、○○(指定速度の半分など)のテンポから弾き始めましょう」などと言われることが多いと思います。全く問題ないように感じますが…

このやり方は、ややもすると以下のような状況に陥ります。

  • ゆっくり弾くこと(○○のテンポで弾くこと)が練習の目的になってしまう(罠1)
  • メトロノームに支配され、「練習する」ではなく「練習させられる」状態になる(罠2)

アナタの練習目的は「とにかくゆっくり弾くこと」ですか?それとも「その曲を弾けるようにすること」ですか?目的を見誤った練習は、効率が良い練習とは言えません。

また、メトロノームに合わせて弾くことを意識しすぎると、メトロノーム主体の練習になるため、テンポの取り方が受け身になりがちです。そのような受け身による練習は、ちゃんとした練習とは言えません。メトロノームは、自分のテンポ感覚を確認するものであって、矯正するものじゃない…くらいの気持ちでいた方が良いと思います。

これをアレクサンダー・テクニーク的に考えれば…メトロノームを使って「ゆっくり弾くこと」をすると、「何が何でもメトロノームに合わせて弾かなきゃ!」というエンドゲイニング的思考が生まれ、良い練習ができなくなる、という恐れもあるでしょう。

巷で言われているメリット…とそのダメな点

練習中に何気なく「ゆっくり弾くこと」を取り入れている方々は、「ゆっくり弾くこと」のメリットとして、以下のようなことを感じられている(もしくは、挙げてられている)ことが多いと思います。

  • (いつの間にか)指が回るようになる
  • (いつの間にか)速く正確に弾けるようになる
  • (いつの間にか)弾けなかったフレーズが弾けるようになる、など

ここで重要なのは【(いつの間にか)】という部分。恐らく、「ゆっくり弾くこと」を取り入れている方々のほとんどは、なぜ自分が「ゆっくり弾くこと」で上達した(ように感じる)のかわかっていないでしょう。その理由は以下の2つ。

  1. 練習目的が「ゆっくり弾くこと」のため、自分で何をやっていたかがわからない(罠3)
  2. 弾けるようになったのは、単なる反復練習のおかげ、というのに気付けない(罠4)(当然、やみくもな反復練習はやっちゃダメですが…)

「いやいや、上達すれば何でもいいじゃん」と思っている方、それは大間違いです。いいですか、どんなに上手なピアニストだって、下手すると腱鞘炎などのケガをするし、ジストニアにだってなります。そのため、自分が何をやっているかわからないまま上達していると感じている人は、それが上達だと【勘違いしている】のだ、と思った方が賢明です。

もちろん、最初が良くない(身体に悪い)動作だったとしても、何度もそれを続けていたら、実際に、弾けなかったフレーズが弾けるようになるでしょう。でも何が変わったか自分自身で気付けないのであれば、それは、単に良くない動作の精度が上がっただけ。その動作のおかげで指が回ったとか速く正確に弾けるようになったと思って練習を続けていると、身体のどこかに小さな痛み・軋みが蓄積し、どこかで耐えきれなくなり、大けがする恐れがあります。

正しい練習をしていれば、練習の前後で実際に何が変わったか(前は○○と弾いていたけど、今は△△と弾いている、など)が自分自身でわかるはず。そのため、「ゆっくり弾くこと」は正しい練習とは言えないでしょう。

巷で言われているメリットその2…とそのダメな点

「ゆっくり弾くこと」を推奨する人の中では、以下のようなことを言う人もいるでしょう。

  1. 「ゆっくり弾けなければ、インテンポでは(速く)弾けない」

この言葉を信じ、練習に「ゆっくり弾くこと」を取り入れている方も多いのではないでしょうか?でも…以下の言葉は納得できるでしょうか?

  • 自転車: (非常に)ゆっくりこげなければ、速くこげるようにならない…!?
  • 歩き: (非常に)ゆっくり歩けなければ、速く歩けるようにならない…!?

やってみればわかりますが、それぞれの動作は、【ゆっくりやる方がはるかに難しい】はずです。人間は、ゆっくりな動作ができなくても、普通の動作・速い動作を行うことは十分可能なんです。これ、実はピアノを弾くときも同じなのですが…ピアノを特別視する方もいるようで、「ゆっくり弾けなければ、インテンポでは(速く)弾けない」という言葉の矛盾点に気付けない(罠5)ことが多いようです。

そもそも、ゆっくりした動作と速い動作では、動作そのものの難しさが全く違います。「ゆっくり弾くこと」では、ゆっくり動作に関する難しさを解消するための練習しかできず、速い動作に関する難しさには全く対応できません。例えば、以下のような点に違いがあります。

  • ゆっくりな動作の難しい点: ゆっくりな動作をずーっとし続けることができるか
  • 速い動作の難しい点: 短時間でどれだけの距離を素早く正確に動かせるか

「ゆっくり弾くこと」の練習で身につけられるのは、「ゆっくりな動作をずーっとし続けること」などであり、速い動作に必要な「短時間でどれだけの距離を素早く正確に動かせるか」などは、絶対に身につけられません。つまり、「ゆっくり弾くこと」の練習で身につけた技術は、残念ながら、速く弾くときには全く使い物にならない、ということです。

巷で言われているメリットその3…とそのダメな点

以下のことも、「ゆっくり弾くこと」で良いとされる点ですね。

  • 演奏中に走ったり、滑ったりしなくなる

そもそも、なぜ演奏中に走ったり滑ったりしてしまうのでしょうか。答えは簡単。【今自分が持っている演奏レベルでは、そのテンポで弾けないから】です。ただし、ここで「だから、ゆっくり弾いて練習するんでしょ?」というのは安易な回答です。

「ゆっくり弾くこと」という練習で得られることといったら、「○○のテンポで弾けるようになった」ということですが…ちゃんと意識して練習していないと、【メトロノームによって、そのテンポで弾かされていただけ】という状態になっている恐れがあります(罠6)。

これでは、「○○のテンポで弾けるようになった」 = 「自分の演奏レベルなら○○というテンポで弾ける」とは言えません。そのような状況に陥ると、いくら「ゆっくり弾くこと」を練習に取り入れても、演奏中に走る、滑る…という癖は、一向に直りません。

もう一度言いますが…演奏中に走ったり滑ったりしてしまうのは、練習で「ゆっくり弾くこと」をしていないから、ではなく、練習中に【自分のレベルで今弾けるテンポがどれくらいか】を把握できていないからです。

よって、練習中にやるべきことは、何が何でも「ゆっくり弾くこと」ではなく、【(今の自分の演奏レベルを考慮すると)この曲をどれくらいのテンポで練習すべきか】を見極めること、ではないでしょうか。

まとめ

以下、「ゆっくり弾くこと」の【罠】についての概要のまとめです。練習する手を少々休め、以下の問いかけについて、じっくり考えてみてはいかがでしょうか。

  1. 「ゆっくり弾くこと」が練習の目的になっていませんか?
  2. 練習中、テンポ取りをメトロノーム任せにしていませんか?
  3. 練習の前後で、自分の弾き方がどう変化したか、把握できていますか?
  4. 普段の練習が、反復練習・機械的な練習になっていませんか?
  5. ゆっくりな動作と速い動作の大きな違いに気付かれていますか?
  6. 今の自分のレベルで弾けるテンポ、どれくらいか把握されていますか?

最後に。
アナタは、自分の弾きたい曲について、「○○のテンポで演奏」したいですか?それとも【自分の意思で演奏】したいですか?今一度、ピアノを練習する目的・意義というものを考えてみても良いのではないでしょうか?

では。

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