プレ「脱力」3: 脱「脱力」のすすめ

公開日: 2017年4月20日木曜日 ピアノ 持論 脱力

こんにちは、リトピです。

「脱力しなさい!」とは、実際には「適切な【支え】を見つけなさい!」ということだ、というのは、前回の記事「プレ「脱力2」: 「脱力」の考え方」でご紹介しました。

ただ、「じゃあ、適切な【支え】ってなんだ?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。ここでは、今までピアノ界にはびこっている「脱力」という考えから脱して、適切な【支え】を見つけるための概念を簡単にご紹介します。

脱「脱力」のすすめ: 前編

「力を抜けば楽になる!?」

ピアノを弾いていて、「あっ、○○に余計な力が入ってる!」「無駄な力の入れすぎで○○が痛くなってきた…」と感じることがあるでしょう。ここで「この力を抜かなきゃ!」「もしかして、まだ「脱力」が足りないのかな?」などと考えたとき、以下の図1のようなイメージを持っていませんか?

図1. 一般的な(?)「脱力」のイメージ

この図1のイメージを持ちつつ、「力み過ぎた○○の力を抜くことで、楽になる!」などと考えていらっしゃる方は多いのではないでしょうか?

…でも、そうやって「脱力」をイメージしても、なぜか上手くいかない・楽にならないことの方が多いのではないでしょうか?

力みの正体(の一つ)

実は、そのような「余計な力・無駄な力」が入っているとき、大抵の場合、図2のような【バランスの崩れた状態】になっています。この「余計な力・無駄な力」の正体(の一つ)は、実は、身体が倒れないようにするための【必要な力】だったんです(その他の力みについては、記事「【力み】の発生理由とその対策方法」を参照)。

図2. 力みの正体(の一つ)

…ということは、実は図1で使われていた力は「余計な力・無駄な力」ではなく、身体が倒れないようにするための【必要な力】だった、というわけです。ここで意識していた「脱力」は、【必要な力】に対してでした。つまり、図1は、実際のところ、以下の図3の状況を作り出していた、ということです。

図3. 「脱力」したことで、状況は悪化…

上手くいかない→ ×もっと「脱力」を意識

ここでもし、今までの練習の中で、「「脱力」を意識しているのに、まだ上手くいかない。。。もしかして、まだ「脱力」が足りないのかな?」と思っていたら要注意。「脱力」を意識しているのに上手くいかないのは、図3のように、「脱力」によって状況が悪化したためです。もしこの状態でも「まだ「脱力」が足りない?」と考えてしまったら…図4のようになってしまう恐れがあります。

図4. もっと「脱力」すると…最終的にはバランスが取れなくなり、最悪ケガすることに…

一旦まとめます。「あっ、○○に余計な力が入ってる!」「無駄な力の入れすぎで○○が痛くなってきた…」と感じるとき、アナタの身体に起こっているのは…

  1. ×: 今の自分には必要のない、不必要な力が(なぜか)使われている
  2. ○: 今、身体が倒れないための【必要な力】を(無意識に)使っている

脱「脱力」のすすめ: 後編

適切な【支え】を求めに

さて、「あっ、○○に余計な力が入ってる!」「無駄な力の入れすぎで○○が痛くなってきた…」と感じるとき、実際に我々が使っていた力は、身体が倒れないための【必要な力】だということがわかりました。でも…そのままでは、当然ツラいですよね。。。そもそも、なぜそんな力が必要だったのでしょうか?キーワードは【バランスの崩れた状態】です。

皆さんも考えてみましょう。バランスが崩れているからそんな力が必要になっている、ということは……その崩れたバランスを取り戻せば、そんな力は、そもそも必要なくなるのでは?

実際、身体が倒れないように耐えている状態(図5(1))から、「脱力」ではなく、【適切な力】(ここでは身体を起こすために必要な力)を使うことで、崩れたバランスは取り戻すことができます(図5(4))。バランスさえ取り戻せれば、身体が倒れないための【必要な力】はいらなくなるので、わざわざ「脱力」なんて意識することなく、身体は今までよりもずっと楽になります。

この後は、身体のバランスを保つため(図5(4)の状態を保つため)の適切な【支え】だけを考えれば十分です。

図5. 「脱力」ではなく、【適切な力】を使うことで、アナタはもっと楽になる。

楽な状態とは

さて…この図5で【適切な力】を使ってバランスを取り戻すとき、もしかしたら今(図5(1): バランスが崩れた状態)よりも大きな力が必要になるかもしれません。「楽 = 力を抜くこと」だと思っている人には、若干矛盾した動きかもしれませんね。

でも、バランスが取れた後の状態に向かうとき、その大きな力も「余分な力・無駄な力」ではなく、【必要な力】になるわけです。これは「良くなる前には(一時的に)悪くなる」や「遠くに飛ぶ前には(一旦)しゃがむ」といわれる類の一つでしょう。

このような考え方は、「上達するためには「脱力」が必要なんだ!」、「まずは「力を抜く」ことが大事だ!」と躍起になっている人にとっては、想像もできないようなやり方だと思います。物事で上手くいかなければ、まずはそのような【固定概念】を取り去ってみることをオススメします(詳細は記事「包丁を扱う」ことからピアノ練習方法を学ぶ」を参照)。要は、「押してダメなら引いてみろ」ならぬ【引いてダメなら押してみろ】ということ。

脱「脱力」のすすめ: まとめ

この一連の流れを、例として足の力をモニタしたものを図6に示します。

図6. 「脱力」と【適切な力】を使ったときの違い
  • 今の状態(仮定): 倒れないための【必要な力】
  • 「脱力」を意識
  • 今にも倒れそうな状態: [A]より力は抜けているが危険な状態
  • もし、もっと「脱力」を意識したら…
    → どこかのタイミングで倒れる → 最悪ケガに…
  • 【適切な力】の方向
  • バランスを取り戻そうとする力: 今の[A]よりも大きな力が必要になる
  • [F]の力のおかげでバランスが取れ、[A]がいらなくなる
  • 適切な【支え】: バランスを保つための力。これを見つけるために練習を重ねる

最後に

ピアノを練習中、「あっ、○○に余計な力が入ってる!」「無駄な力の入れすぎで○○が痛くなってきた…」と感じたときは、大抵【バランスの崩れた状態】(1)になっています。その場合、上記図6を参考に、「脱力」([B]や[D])を意識するのではなく、バランスを取り戻すための【適切な力】[E]を探し、適切な【支え】・楽な状態(4)を見つけてみてください(当ブログでは、その「見つけ方のコツ」を掴む方法ご紹介しています)。

面白いことに、上記図6(4)・[H]の状態になると、あれだけ悩んでいた力みが驚くほど急激になくなります([G]の力の流れは無意識、かつ、瞬時に起こる。椅子に座った瞬間、足などの身体の力がスッと抜けるように…)。

この状態に持っていくことで演奏に余裕が出てくるので、音楽的な演奏にも力を入れることができるでしょう。つまり…まず最初は、そのようなケガしないための状態(バランスの良い状態・楽で力みのない状態)に持っていくことが何よりも大切だ、と私は考えています。

では。

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