お悩み相談室2: ピアノの音色を良くしたいのですが…

公開日: 2015年10月20日火曜日 ピアノ 持論

こんにちは、リトピです。

今回も「お悩み相談室」では、よくピアノ初心者が陥る悩みを理系の独自目線でズバッと解決しちゃいます。 次は2つ目のお悩みです。

悩み2. ピアノの音色を良くしたい

ピアノの音色は何で決まるのでしょうか。 音色について調べると...

発音体の違い、あるいは同じ発音体でも音の出し方によって生じる、音の感覚的な特性。高さや強さが同じ音でも、それに含まれる部分音の種類や強さなどによって違いが生じる。おんしょく。
出典: デジタル大辞泉
と、いうわけで、さっそく、ピアノの音色にかかわる音の種類や強さを分けてみましょう。

ピアノの音色にかかわる3つの音の種類

ピアノを弾くとき (特殊な弾き方は除く)、打鍵の様子は、横軸を時間、縦軸を鍵盤を押す力とすると、以下の図1のような流れとなります。

図1: 打鍵時から打鍵後の時間と力の関係
それぞれ、以下のような意味を持ちます。
  1. ピアノの音量に関しては、何しても無意味な時間
  2. 打鍵の始まりと上部雑音の発生。このときの時間をt0とおく。aで何をしてたかで上部雑音のなり方が変わる。
  3. 鍵盤を押している時間。この力積がピアノの音量にかかわる
  4. ハンマーがアクションから離れ、ピアノの弦に当たるタイミング。このときの時間をthとおく。鍵盤に一定の力をかけ続けた場合は、打鍵時間の70%にあたる。 (詳細は『楽器の物理学』, 丸善出版(株), p.356参照)
  5. ここで何しようがピアノの音量には何の意味もなさない。
  6. 鍵盤が底を突くタイミング。ここで下部雑音が発生。このときの時間をtfとおく。eで何をしてたかで下部雑音のなり方が変わる。
  7. 鍵盤を押してももうこれ以上下がらないエリア。「脱力」信者や重力奏法を謳う人たちはここの扱い方がダメ。
ここで、打鍵時間はtf - t0であり、ピアノの音量を決める(c)の力積は Fx (th - t0)と計算されます。また、(b) 上部雑音と(f) 下部雑音は、図2の場面で起こります。
図2: 上部雑音と下部雑音の発生タイミング
それぞれ、鍵盤や鍵盤の底に当たる瞬間の運動エネルギー (EK = 1/2 mv2)の一部が音エネルギーに変えられたと仮定すると、両方の雑音の強さ (音量)は、主に当たる瞬間の指や鍵盤の速度の2乗に比例することとなります。ただし、上部雑音においては、鍵盤に当たる瞬間の指の立て具合によっても変わります。

このことから、ピアノから出る音の種類や強さは以下の表のようにまとめられます。ちなみに、音の種類は私の主観です。

表1: ピアノから出る音の種類と強さの関係
名称 発生場所 音の種類 音の強さ
1. 上部雑音 指が鍵盤に当たった瞬間 (単発) 主に「コツ」や「トン」という硬い音。指の腹で弾けば多少抑えられる。 当たった瞬間の指の速度の2乗に比例
当たった瞬間の指の立て具合
2. ピアノの弦の音 ハンマーが弦を叩いた瞬間~ (持続可能) 純粋なピアノの音 鍵盤を押す力とその時間の力積で決まる
3. 下部雑音 鍵盤が底に当たった瞬間 (単発) 主に「ドン」という鈍い音 当たった瞬間の鍵盤の速度の2乗に比例

つまり、ピアノの音色にかかわる音の種類は3種類あり、それらを組み合わせることで、一つのピアノの音色が出来上がる、というわけです。上部雑音も下部雑音も雑音という名前がついていますが、それもピアノの音色にかかわる重要な要素です。

ピアノの音色を演奏技術でコントロール

では、どう組み合わせれば、ピアノの音色は思い通りになるのか。私の感覚ですが、例として3つの音色を考察します。

やわらかい音

これは「コツ」や「トン」という硬い音を出す上部雑音や鈍い音を出す下部雑音を出すのは良くないでしょう。 そのため、図1での(a)での腕・指の加速を弱め (出来れば鍵盤に引っ付いて)、指を伸ばし、指の腹で打鍵し、(e)の領域内で指を上げてしまえば、下部雑音が出ず、全体としてやわらかい音が出るでしょう。

硬い音

これは図1での(a)での腕・指の加速を強め、指を立てて弾き、上部雑音をふんだんに利用するとよさそうですね。やわらかい音同様、下部雑音は抑えた方がより硬い音に聞こえると思います。

重い音

こちらは逆に、指の腹で打鍵し、上部雑音を抑え、図1の(e)の領域で思いっきり鍵盤を加速させ、下部雑音をがっつり出すと重い音になると思います。

最後に、以下の点について考察してみましょう。

ところで、「脱力/重力奏法」で弾くとどうなるの?

ちなみに、脱力や重力奏法でピアノの音がキレイに...という話を聞きますが、腕の力を使わず、自由落下、つまり重力に任せて弾くとは、鍵盤に腕の重さをのせるということになるので、体重50 kgの人の片腕を約3 kgとすると(記事「なぜ「脱力」は敵なのか5: 身体は鍛えるな。感覚を鍛えろ。」を参照)、図1の鍵盤を押す力Fx = 29.4 N を鍵盤の底まで与えることになります。当然、指が折れるでしょうけど、百歩譲って、もし指を折らずに弾けたと仮定しても、それは下部雑音が鳴りまくりの「重い音」と同じ音色ですね。 きっと、彼らの音色の好みは、大音量の下部雑音を含んだピアノの音、ということなのでしょうか。。。

ちなみに、指の関節を固く (もしくは柔らかく)するとピアノの音が良くなる、ということも言われるようですが、それは幻想であることが上記でおわかりでしょう。指の関節の固さはせいぜい上部雑音に少々かかわる程度。むしろ固くしすぎると指を曲げ伸ばしする筋肉を使いすぎて、すぐばててしまいます。この話はまた後日。

では。

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